ニューススパイラル

アユ釣り客激減...漁協は経営危機

2009年06月26日

負のスパイラルに陥った紀州の川。未来はあるのか?

新聞報道によれば、和歌山県内の河川でのアユ釣り客が激減し、各河川を管理している内水面漁協が経営の危機に直面しているという。富田川(とんだがわ)漁協では遊漁券の売り上げが3年前の4分の1以下に激減。組合員に負担を求めたところ、組合員数が半減してしまい、現在も事務員をリストラするなどし、なんとか組織を存続しているものの、いったんは組合の閉鎖を検討せざるをえない状況に陥った。

どうしてアユ釣り客が減ってしまったのか? おなじみ村田満さんは「釣れへんからですわ」とばっさり。当たり前の話、「釣れるところに釣り人は集まる」のであって「釣れないところにはまず行かない」のである。まして遊漁料金がかかるとなれば言うまでもない。

激減するアユ、そして釣り客に歯止めをかけられない状... 激減するアユ、そして釣り客に歯止めをかけられない状況が続く和歌山県の各河川。漁協の経営が危機的な富田川のほか、日高川でも同様に、遊漁者は10年前の3分の2程度になっているという

何年か前、下流域からずっと川沿いを見て回ったとき、ほとんどアユ釣りをしている人の姿を見ないことがあった。そのときは、なんとかアユが掛かるダム上流のごく一部でだけ、釣り人がかたまって竿を出しているという状況だった。かつて天下一、アユの名川と呼ばれた日置川(ひきがわ)でのさびしい話だ。

これは和歌山県に限った話ではない。尺アユで有名な兵庫県の揖保川(いぼがわ)もしかり。現地、木村おとり店のご主人の話でも釣り客は10年前の半分以下という。かつて2300人いた組合員も現在では1700人ほどに減ってしまったそうだ。当然、遊漁券の売り上げも半減し、放流にも影響が出ているとか。かつては放流量を重量で示していたものを近年、尾数に変更したため、実質の放流量が減っているのではないかと指摘する声もある。揖保川は今シーズンこそ被害はわずかだったが、ここ数年、解禁直前に冷水病が発生し河川のアユが大量死、特に中下流域での不振が目立っていた。

一方で村田さんによれば北陸の河川、たとえば福井県の九頭竜川(くずりゅうがわ)や富山県の神通川(じんづうがわ)は6月半ば現在、連日解禁日のようなにぎやかな人出なのだそう。岐阜県の長良川郡上(ながらがわぐじょう)も今シーズンは好調で釣り人が集まっているそうだし、四国の河川も安定しているという。

このような状況に追い打ちをかけるのが、いつまで続くか分からない不景気。シーズン中に何度でも釣りができるが1万円以上もする年券の購入をためらう人も多いはず。月に一度か二度しか釣りに行けない週末釣り師なら当然だ。さらに年券購入の意志はあるがシーズン入りしたものの釣果が上向くのを様子見し、やがて梅雨が明け、お盆も過ぎ…。初釣行が遅くなればなるほど、あと何回行けるか分からないので年券の購入は見合わせ、日券での釣りを選ぶのが当然だ。揖保川のように冷水病のため水温の低いシーズン初期に釣果がふるわない河川が多かったのも原因のひとつ。

ファン層の高齢化でリタイヤする人の数に対し、新たに入ってくる人の数が追いつかず、アユ釣り人口全体が減少しているのではないかという話もある。アユ釣りの道具が高価なため若い人が入門しづらいのも一因だし、アユ釣り自体が難しくなりすぎているため非常に敷居の高い釣りになってしまっているのも間違いないだろう。

しかし、なんといってもアユの資源量減少が釣れない最大の原因になっているのは間違いない。特に和歌山県の各河川のように、かつて天然ソ上のアユがいくらでも釣れたところでの落ち込みが顕著だ。日高川(ひだかがわ)漁協によれば1979年に1850万尾以上あったソ上数が年々少なくなり、2006年度以降3年間は毎年約50万尾にまで落ち込んだのだそう。ソ上量の目安になる海産稚アユの県内採捕量も近年、不漁が続いているらしい。かといって、漁協の収入が少なくなっているため放流量を増やし、ソ上が減った分を補うということも難しい。また冷水病をまねいた原因が、その放流にあったことも考えれば、河川とアユとアユ釣りは、まさに負のスパイラルに陥っていると言っていいだろう。

ある人は「山が悪いからアユが減ったんだ」という。つまり森林伐採により上流部の山の保水力がダウン、大雨が降れば一気に海まで流れ落ちてしまい、下流域でアユが産卵をする大切な秋のシーズンに川の水が安定供給されず水量が非常に少ないことが多いという。結果、ふ化しても稚アユは海に下って成長できず、翌春のソ上量が激減する。両岸をコンクリートで固めてしまった水路のような河川もよろしくない。極細で切れやすい友釣り仕掛けには大敵の、一面にはびこるアオサ(緑色の藻類)も釣り人減少の原因だろうか。

いずれにしても釣り客を増やすためには、まずアユの資源量を回復させ、だれにでもそこそこ釣れるようにせねばならない。そのためにどうすればいいのか? 真剣に河川環境から考え直さないといけない時期にきている。

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